- 海外で展示会が開催されるので展示用商品を発送する
- 現地営業用に商品見本を海外に発送する
海外ビジネスをしていると、このような状況に直面することがあるかと思います。
海外への輸出や日本への輸入などの取り引きは往々にして手続きが煩雑になったり、またそれに伴うコストが発生します。特にネックになるのが輸入時にかかる関税と消費税です。
この関税と消費税ですが、実は一定条件を満たす取引であるならば、ATAカルネを利用することで免税にすることが出来ます。今回はそんな便利なATAカルネに関する内容をまとめました。
ATAカルネとは?
ATAカルネとは、世界の主要国の間で結ばれている「物品の一時輸入のための通関手帳に関する通関条約(ATA条約)」に基づく国際的制度による通関用書類のことです。
https://www.customs.go.jp/kaigairyoko/atacarnet.htm
税関のホームページからの引用です。ATAカルネとは書類の種類を意味し、輸出入通関時にこのATAカルネという書類を利用することで免税手続きを行うことが出来ます。
ATAとは一時輸入を意味するAdmission Temporaire(フランス語)、Temporary Admission(英語)の頭文字の組み合わせです。またカルネとはCarnet=フランス語で手帳を意味します。
国際条約であるATA条約に加盟している約80ヶ国で使用することが出来ます。
日本でATAカルネの発給を行っているのは、一般社団法人「日本商事仲裁協会(JCAA:The Japan Commercial Arbitration Association)」です。
東京本部と大阪事務所にて発給申請を受け付けていますのでホームページを確認ください。
ATAカルネが使える取引
日本に再輸入することが前提
ATAカルネを使用できる条件として、海外に輸出した貨物を日本に再輸入することが前提になります。
日本→海外へ輸出した後、海外→日本への再輸入を行わない場合は使用することが出来ません。
なお、海外で輸入する際と日本へ再輸入する際どちらもATAカルネによる免税が受けられます。
また輸出した貨物の一部が加工されたり販売されたりといったように、その材質や形状が変化するものには使用できません。
詳しくは日本商事仲裁協会のホームページを確認したうえで、申請前に問い合わせることをおすすめします。
主な用途は3パターン
ATAカルネの使用が認められる用途は以下の3つです。
これらの用途に反する取引に該当する場合、本来ATAカルネを使用することで免税できる輸入税がかかったり、税関によってはペナルティが発生します。
展示会・国際的な催し・国際会議
海外で行われる展示会に日本から輸出した貨物を展示し、展示会終了後に再び日本へ返却する場合などです。
展示会で販売を行い、輸出時と再輸出時で物品の形状や個数が異なる場合などはカルネ使用義務違反となります。
職業用具
海外での現場調査に使用する機材や測定器、映画やCMなどの撮影用の機材など、その物品を使用して現地で作業を行う物品の場合です。
こちらも輸出時と同じ状態で返還しなければいけませんので、消耗品などには使用できません。
商品見本
販売を伴わない、あくまで見本として使用する物品の場合です。海外での営業活動のために持ち出す取引などが該当します。
ATAカルネを利用するには?
日本商事仲裁協会へ登録
ATAカルネの発給には個人法人ともに日本商事仲裁協会への利用登録が必要です。
申請後審査完了まで数日かかるので、直近でATAカルネを利用する予定がある場合は早めの申請が必要です。
申請からATAカルネ発給まで
申請後、問題が無ければ数日でATAカルネが発給され、そのカルネをもってカルネ通関を行います。通常は通関業者へ依頼することが多いかと思いますので事前に業者への連絡も必要です。
発給後、カルネ原本を通関業者に引き渡してから通関を行うので、余裕をもったスケジュールでの手配が必要です。
輸出~再輸入のあとカルネを返還
カルネの有効期限は原則発給から1年間です。
この有効期限までに海外から再輸出が行われなければ違反となります。勘違いしやすいのが、日本での再輸入の日時は有効期限に含まれないという事です。発給した際に記載される有効期限までに海外から再輸出が行われるように手配が必要です。
また、当初の有効期限とは別に現地税関側でより短い再輸出期限を設定されることがあります。この期日を遵守できなかった場合もペナルティの対象となります。
現地税関側で設定された期日を日本側で把握することは難しいので、輸入者側とコミュニケーションをとりながら違反がない取引となるように十分注意が必要です。
まとめ
- ATAカルネは日本商事仲裁協会が発給している
- 使用用途は国際的な催し、職業用具、商品見本の3つ
- 輸出した時と同じ状態で再輸入することが条件
- 有効期限は原則1年間
- 違反した際はペナルティが発生する場合があるので注意